山下 恒久 院長(山下小児科クリニック)のインタビュー

山下小児科クリニック 山下 恒久 院長

山下小児科クリニック 山下 恒久 院長 TUNEHISA YAMASHITA

医師を志されたきっかけについて教えてください。

実は子供の頃小児ぜんそくで、親に背負われて近所の佐久総合病院に通っていました。そこで診ていただいていた小児科先生は同級生のお父さんで、その方にとても憧れていました。口数の少ない方だったのですが、いつも優しく信頼できる先生でした。子供ながらに「あの先生は立派な方なんだなぁ」と思わせる雰囲気がありました。わたしの両親は医療関係者ではありませんでしたが、自分の将来を考える際、選択肢の一つとして考えたのが医師でした。
学生時代は循環器に興味を持ちました。当時は成人・子供、外科・内科のどちらでもよいと思っていました。しかし病棟実習で一番印象に残ったのは小児科でした。未来のあるお子さんが病気を治して帰っていくのが何よりもうれしいと思うようになりました。
親御さんも喜びますし、「元気になってよかったね」と言える機会が多いためです。幸いわたしの大学には日本の小児循環器の重鎮として有名な先生がいらっしゃいました。6年間のカリキュラムを終えた後はそのまま大学院に進み、大学から関連病院の都立広尾病院に出向しました。

そちらでも出会いに恵まれました。広尾病院循環器科には不整脈をカテーテルで治す最先端治療を行える先生がいました。時間を作りその先生に教えを請いました。出身大学も違いますし、初めてお会いする先生だったのですが、懐の深い方で一所懸命教えてくださいました。当時は小児科で不整脈を正確に治療ができる医師は少なかったと思います。そこで私達も小児科で不整脈治療をしっかり行わなければいけないと考えるようになりました。大学に戻ってからも不整脈を中心に治療していたのですが、このことが縁となり、米国に留学できるチャンスもいただきました。

テキサス子供病院ではカテーテルアブレーション(足の付け根などの太い血管からカテーテルを挿入し、心臓内部にある不整脈の原因部分を高周波電流で焼き切る治療)という治療法を集中的に学んできました。私達は是非これを小児でも導入したいと考ました。日本の小児カテーテルアブレーションのパイオニアです。広尾病院循環器科とテキサス子供病院の両方を選んだことで、かなり専門性の高い治療を学べました。これまで育てていただいた先生方には、どれだけ感謝の言葉を述べても足りないくらいです。

開業年と、開業地にセンター北を選ばれた理由について教えてください。

開業は1996年で、来年でまる20年になります。センター北を選んだのは、たまたま勤務医時代から都筑に住んでいたためです。大学までの通勤に1時間40-50分かかりました。患者さんをもっと時間をかけて丁寧に診療したかったことから、開業の意志が固まってきました。当時センター北はまだ開けておらず、商業施設も病院もほとんどありませんでした。広い敷地と何台も駐車できるスペースを確保したかったものですから駅前では都合が悪く、その結果やや奥まった場所を選ぶことになりました。最初はビルで開業することも考えたのですが、耐荷重の問題からいろいろな不都合が出てきました。当院では、来院したお子さんが感染症にかからないように特に留意しておりましたので、パワーのある空調設備を導入したかったのです。ビルですと、屋根裏スペースが狭すぎて装置が入らないという問題がありました。そこで広い土地を買い、大きな空調設備を入れ、感染症の患者さんと一般の患者さんとで入り口を分けました。また、さまざまな事情を抱えた乳児や免疫力の弱いお子様を個室にお通しし、わたし自身が個室に伺う形で治療もできるようにしました。こうして、「自分を頼ってきてくれる患者さんを一所懸命診療させていただきたい」という当初の願いは、きちんとかなえることができました。ただ始めてみて、想像していたより大変であることもわかりました。

アレルギーにかからないための対策や、病気に負けない体を作る秘訣を教えてください。

アレルギー対策としてまず挙げられるのはスキンケアです。実は食べ物のアレルギーは肌のトラブルが多い人ほどなりやすいのです。肌は外的刺激の防御装置ですので、肌荒れが進んでいる人ほどアレルギーになりやすく、肌が健康な人ほどなりにくいことが知られるようになりました。そして最近のアレルギー治療では、アレルゲンとなる食品を完全に除去せず支障の出ない量をコンスタントに摂らせることが主流になっています。
健康を守るにはもちろん身体を鍛えることも大切な要素ですが、わたしは心の問題を重要視しています。時折医師会の代表として小中学校の校長先生たちの会議に出席させていただきますが、先生方は口をそろえて「子供たちは忙しくて可哀想」と仰います。お子さんは心が未成熟で不安定です。自分が持っている不安をきちんと言葉にしきれていません。それは周囲の大人が注意してあげたいですね。

わたしは患者さんを診療するとき、ご両親・祖父母・兄弟との関係と、育っている環境、学校でのご様子などを、つぶさにお聞きしています。それぞれのお子さんで全く異なる環境で過ごされているため、お話を伺いながら時間をかけて把握し治療法を検討するようにしています。身体だけではなく、心の問題も含め全体をサポートしていきたいと考えています。

小児科ならではのほほえましいエピソードがあれば、お聞かせください。

開業から今年で19年になりますが、幼稚園の頃から診ていた方が今度はご自身のお子さんを連れていらっしゃいます。「あのときはおしめをしていた子が、現在は自分の子供を育てている….」と、感慨深い思いをさせていただいています。センター北は育児環境としては恵まれており、結婚後もこの地域に住む方が多いようです。
お子さんからは手紙をたくさん頂戴します。小さいお子さんでも絵は描けますから、兄弟がいらっしゃる場合、上のお子さんが文章を、下のお子さんが絵を…という合作もあります。中にはわたしの似顔絵もあるのですが、とても似ていてうれしいですね。

診察で心がけていることと地域のみなさまへのメッセージをお願いします。

座右の銘としてお話した通り、「患者さんは自分の子供として診療する」をモットーとしています。大学で長らく治療をしていましたが、当院では大学と同じ診療をさせていただいています。わたしが一番良いと思う治療を受けていただきたいのです。小児科医の良いところは、大した道具はなくても腕一本でやれるところだと考えています。
地域のみなさまにお願いしたいことは、信頼できる病院を1軒探しそこと永くお付き合いしていただくことです。、よく複数の病院を回る方がいらっしゃいますが、医師は1回の診察で把握しきれないことがいろいろあります。先ほど申し上げました通り、患者さんご本人の全体像を把握したうえで治療法をお選びしておりますから、1か所とじっくりお付き合いいただけたらと思います。結果的に最善治療を受ける事が出来ると思います。

※上記記事は2015.4に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

山下小児科クリニック 山下 恒久 院長

山下小児科クリニック山下 恒久 院長 TUNEHISA YAMASHITA

山下小児科クリニック 山下 恒久 院長 TUNEHISA YAMASHITA

  • 好きなアーティスト: 何でも聴きます
  • 好きな場所・観光地: 赤レンガ倉庫、三渓園
  • 出身地: 長野県佐久市
  • 趣味・特技: 身体を動かすこと、サイクリング
  • 好きな本・愛読書: 経済書
  • 好きな言葉・座右の銘: 患者さんを自分の子供として診療する

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