葉 紹誠 院長(葉歯科医院)のインタビュー

葉歯科医院 葉 紹誠 院長

葉歯科医院 葉 紹誠 院長 SHOSEI YOH

昭和大学歯学部卒業。開業医勤務を経て、1989年に『葉歯科医院』を開院(横浜市営地下鉄「都筑ふれあいの丘駅」より徒歩18分)。

食べ物屋さんの息子が歯医者さんになるまで

父は洋食屋を、母は中華料理店の娘でした。私は食べ物屋さんの家庭に育ったのです。料理屋さんはご存知の通り、仕込みも含めれば労働時間が長く、子供と一緒に居られる時間は少なくなるわけですね。子供が自由になれば、それは好き勝手しますよ(笑)。歯みがきなんてするわけもないし、必然的に口の中は荒れていきます。学校健診では毎年のように虫歯を指摘され、その度に歯医者さんに通うことになりましたが、そこで出会った歯医者さんがありがたい存在だったんですね。優しくて、なぜだか、治療で痛い思いもとんと経験しませんでした。私にとって歯医者さんはとても居心地のいい場所だったのです。両親からは「あなたにはあなたの人生があるでしょう」と育てられました。それを受けて私は、食の世界も含め、自分の道を模索することになります。ちょうどその頃、医療系の本を読んでいました。確か、「食べ物と癌」という題でしたかね。それを読み進めていくうちに、医療系の職業への憧れが徐々に高じていったのです。そこでまず脳裏に浮かんだのが、小さい時からずっとお世話になっている歯医者さんの存在でした。幼い時からの体験と自分の思いが重なり、この道を選んだわけですけども、そうと考えますと、本当に自分が通っていた歯医者さんのありがたみを感じますね。
『葉歯科医院』は1989年(平成元年)に開院いたしました。都筑区が出来たのが平成6年のことで、当時、この辺りはまだ緑区としてあり、その名の通り、緑豊かな環境に恵まれていました。どうせなら、緑に包まれた気持ちのいい場所で、新しい街でゼロから始めてみたいと考え、この場所を開業地に選んだのです。何もなかった当時を思えば、本当にいい街になりましたよね。

考えを押し付けるのでもなく、患者さんと一緒に

様々な条件はありますけども、出来る限り歯を残していくという方針に変わりはありません。歯という素材がなければ、治療のしようもないわけですから。10パーセントでも残せる可能性があれば、患者さんの同意を得て残す方向で力を尽くすということになります。一方で、明らかに残せないケースもあります。その場合は、患者さんに決断を委ねます。命に関わることではないですから、幾分の余裕はあるわけです。あせる必要もありませんし、患者さんの決断を待って治療を決めていくことになります。私は、自分の考えを押し付けようとは思いません。いまがどういう状況で、どういう選択肢があるということをお伝えし、その上で患者さんに治療を決めていただくスタイルをとっています。ここでよくあるのが、「お任せします」というもの。しかし、「お任せします」では困るのです。これは、責任を転嫁するわけではありません。身体は、自分でしか守れないのです。いくらお金があろうが、人脈があろうが、自分の意思で努力しない限りは、健康は得られないんですね。そのための情報はもちろん提供していきますし、やはり、ご自分のお口に関心を持っていただきたいのです。お節介かもしれませんが、関心を持つことで、虫歯や歯周病から遠ざけることが可能になる面があります。ご本人が決めて、自身の意思で健康を保っていっていただきたいのです。

親身になって、その人が出来るケアを考える

私は普通の街の歯医者さんですから、出来ることをやるのみです。反面、出来ないことを無理に頑張ろうという気は持っていません。患者さんは実験台ではないわけですから、出来ないことは専門家に紹介することが大切と考えています。歯科医師というよりは、歯医者さんでありたいのです。確かに、この分野に関しては専門家でいくらか長じているということはあるでしょう。でも、同じ人間ですから、対等な立場で、親身になって話をしていくことが大切と思っています。
背景であったり、生活の環境は人それぞれです。それを頭ごなしに「これをやりなさい」「あれはやっちゃダメ」というのは簡単ですけども、どうしても出来ない状況があるわけです。小さいお子さんを抱えているお母さんに対して、歯みがきをサボってはダメ、甘いものはダメ、といっても、それが無理な状況は多々あります。固いことは言わず、その人がおかれた状況で歯を救えるルートを考えるのが、私たちに仕事と思っています。

食べることは生きること

「フレイル」という言葉があります。直訳すると「虚弱」を意味しますが、この言葉の派生したものに「オーラルフレイル」というまた違った言葉があります。好き嫌いは別として、お口が一定以上不自由な状態が続くと、自然、噛みにくいものを敬遠するようになります。お肉を食べなければたんぱく質が摂れなくなりますし、野菜が少なくなればお通じにも影響するでしょう。そうなれば、身体が不調にもなってきます。
食べれるものが限定されることは、会食の機会が減ることにもつながってきます。外に出ることも少なくなり、話すこともしないとなると、だんだんと介護される側に近づいていく。オーラルフレイルが全身のフレイルを引き起こしてしまうということなんですね。
私は、食べることは生きることだと思うのです。医療的手段を用い、栄養を摂ることはできるでしょう。しかし、お口から食べるという行為は、五感を刺激するものです。味覚や触感はもちろん、匂いや音、それらが「食」を楽しい時間にしてくれるのです。入れ歯になってしまうと、ある程度の制限は出てくることになります。しかし、その中で様々なものを食べられるようにサポートしていくのが、私たちの役割になります。
小さい頃、私の家庭では朝ごはんを食べないと学校に行かせてくれませんでした。よく覚えているものだと思いますけども、それがもとで44回の遅刻を記録しました(苦笑)。当然、親も一緒に呼び出されることになりますが、そこで母は「食べることが出来ないのに一日生活出来るわけないでしょ」と反論したのです。我が親ながら、まさに正論でしたね(笑)。
食べることからすべては始まっていきます。その楽しみをいつまでも享受して、みんなで仲良く暮らしていきましょう。

これから受診される患者さんへ

食べること、話すことに、歯医者は関わっていきます。楽しく食べて、楽しく会話することが、その方の人生を豊かにすることは確かです。私に出来ることで、「食べる・話す」ことの不自由さから解放して差し上げたいと思っています。お口のことで何かありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
※上記記事は2020年9月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

葉歯科医院 葉 紹誠 院長

葉歯科医院葉 紹誠 院長 SHOSEI YOH

葉歯科医院 葉 紹誠 院長 SHOSEI YOH

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